霧箱実験・陽電子が見えた? |
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![]() それは1932年にアメリカのアンダーソンが発見した陽電子という素粒子です。当時、反粒子という概念が提唱されていましたが、その証拠はまだありませんでした。反粒子とは粒子に対して存在するもので、粒子と質量などの性質はまったく同じ、しかし電荷が粒子と反対のものです。例えば電子は電荷が-1の粒子ですが、その反粒子が陽電子で質量など電子と全く同じで電荷が+1というものです。 アンダーソンはこの陽電子を発見したのです。世界初の反粒子発見ということで物理学会は震撼したそうです。そして、彼はこの発見でノーベル賞を受賞しています。 このような現象に簡単な装置で挑戦できるのです。 さて、上の写真はγ線(エネルギーの非常に強い光)が陽電子と電子に変身したもののように見えます。「これが陽電子だ!」といいたいのですが、確信を持てない点があります。
次に、このガラス容器を強力な磁石の上へ置いてみます。すると、円軌道の放射線雲が現れます。この実験で見える放射線は電荷を持っていますので、その軌道が磁石の力で曲げられ円軌道となるのです(参考:展示場3階・グロー放電)。 この曲がり具合と射線雲の太さから放射線の種類を見分けることができるようになります。例えば、鳴門状の放射線雲は渦の向きから電子であるかあるいは陽電子であるかを区別することができます。 <参考文献>森雄兒:物理教育43-3(1995)269 放射線雲霧箱は上部が常温で底部が液体窒素で冷やされ、そしてアルコールの蒸気が充満しています。上部にある温かいアルコールの蒸気は液体窒素(摂氏-200度)で冷やされた底部に漂ってきて冷えます。そうすると、わずかな刺激で液滴になってしまう状態(過冷却)になります。そこへ放射線が飛び込んでくると、そのかすかな刺激でアルコールは液滴になります。 これが白い糸のようなアルコールの雲、放射線雲の正体というわけです。つまり放射線雲は放射線の飛跡なのです。これらは空中を漂っているラドンなど放射性物質から出る放射線と宇宙から地球に飛びこんできた粒子が大気分子と衝突したときに発生する2次宇宙線(参考:展示場4階・スパークチェンバー)です。もちろん、霧箱にウラン鉱石などを入れるとそこから放出される放射線を観察することもできます。 |